Vol.7 日本の紅茶文化はまさに進化中

「過去の紅茶との決別」

皆さん、20年くらい前のいわゆる英国式紅茶と言われた味を覚えていますか? 割と重い紅茶――例えばニルギリやアッサムといった、濃くて渋目の紅茶を「これぞ紅茶」としてパイオニアと言われる人たちが広めていました。

うちのティールームに来た人がムレスナ・ティーの紅茶を飲むと、「私が今まで紅茶だと教わってきたのは、もう少し苦くて渋いものだった」と言うわけです。「そうでしょうね。だからそれって日本人が本当に好きな味じゃないじゃない?」と。日本茶のように、甘みの中に適度な苦味と渋みを含むのが煎茶の一番美味しいところであって、そのバランスが取れているから後味が良く、スーッと体に入ってくるわけです。それに対して、甘みのない苦味と渋みだけのお茶を「これが美味しいんだよ」と言って普及させたのが過去の紅茶業界の人たち・・・という話をしたら、「なるほど、でもそんな話をもっと早く聞きたかったわ」と言われました。よくあることです。

だから、僕が良いと思う紅茶は、日本人の嗜好や文化にマッチする紅茶なんです。じゃあ、欧米の紅茶と何が違うのかと言えば、大雑把に言えば「草食と肉食の違い」なんです。草食というのは僕ら日本人ですね。日本人というのは、まず香りから入って、食べて、飲む。食べた時・飲んだ時に、最初に嗅いだ香りと口に入れた時の味が一致していることを好みます。「美味しいな」と感じやすい。

でも、肉食の西洋人は違って、一致してなくていい。例えばブルーベリーの紅茶なら、香りはブルーベリーだけど、味はほとんど変哲のないブラックティーの味でいいんです。肉食の多い料理の後に飲むには、その方がスッキリするんでしょう。食文化の違いは大きいので、ムレスナ・ティーがアジア圏で人気なのはそういった理由なんだと思います。

 

「日本のスタンダートティーの風味とは」

しかも、欧米の水は硬水で、日本の軟水とは違って抽出する力が低い。だから濃いブラックティーが美味しく感じるられるんですが、そのまま日本に持ち込んでも日本人が美味しいと感じることはない、と言うのが僕の持論です。

さらに日本には四季があります。だから、その四季に合わせた紅茶のフレーバーが求められるんです。気候に応じた気分にマッチするものを作りたいと思って続けていたら、気づいたら700近いフレーバーを作っていました。

今は日本茶ブームで、スッキリとした味わいの僕たちの紅茶を支持してくれる人が増えているのかもしれません。紅茶を飲む人たちの意識も変化している最中なのでしょう。だから僕は、日本の紅茶のスタンダードを目指したいと思っています。ほのかな甘味があり、バランスの良いスッキリとした味わいの紅茶こそ、これから日本で愛される紅茶だと信じて作り続けます。

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